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suugakusha

算数と数学36 相当算

こんにちは!



「算数と数学32 分配算」に掲載した「オマケ」の解説を、次回(「算数と数学33」)掲載と書きながら掲載していませんでした。

この回(算数と数学33)は内容的に長いので別の回に解説を行う旨を書き忘れ、そのままになっていました。結果かなり長くなってしまいましたが、「算数と数学33」に「オマケ」の解説を追加掲載しましたので、最後までお楽しみください。



さて、今回は、小5で学ぶ「相当算」です。

(ここでは実際の教える順番とは異なる順で「特殊算」を紹介しています)


これまで「比」を多用してきましたが、この「比」を学ぶのは小6です。

小5で「割合」を学びますが、この「割合」の意味と計算をしっかりと身に付けることが、その後の大きな力となります。一部小5後半で「比」を学ぶ塾もありますが、まだ「割合」の勉強がきちんとできていない段階で「比」を教えてはいけません。

また、小5で学ぶ「相当算」などに対し、わざわざ線分図を使って解くよう促されることがありますが、まったく無意味であり、かえって算数の力を失うことになります。

全体量を「1」とする「割合」では線分図の有用性はありません「相当算」の基本は「割合」です。


更に、「相当算」(やその他特殊算)の単元に、「倍数算」「消去算」などを含めている場合もあり、まったく勘違いした教え方、解き方、となっていることもあります。

また、「割合」を正しく学んでいないことが、「相当算」などから算数が分からなくなった、嫌いになった、と言う子の増える要因にもなっており、特に「相当算」ではない問題を「相当算」として扱っている場合は尚更です。

「相当算」については、小5の段階では「割合」を正しく繰り返し繰り返し学び、純粋な基本問題のみを扱うべきであり、それを「解く」には「線分図」などまったく不要です。


その「割合の基本」を簡単に説明すると、


どれ(何)が「もとにする量」(と「比べられる量」)にあたるかを的確に見えるようにすること


比べられる量÷もとにする量=割合

もとにする量×割合=比べられる量

比べられる量÷割合=もとにする量


であることをしっかり理解し、計算も含め、できるようにすることです。

もちろん他にも、百分率や歩合、小数↔︎分数、増減、等々、覚えなければいけないことがとてもたくさんあり、それらを繰り返し練習することが重要です。

長くなるので、この「割合」の多岐に渡る内容はここでは省略します。


その上で、次のような問題は「相当算」からは除きます。


持っているお金の2/3(3分の2、以下同)が800円です。持っているお金はいくらですか。

→「もとにする量」は「持っているお金」、「比べられる量」は800円、割合は2/3なので

   800÷2/3

=800×3/2

=1200         答 1200円


持っているお金の1/3を使ったら800円になりました。いくら持っていましたか。

「もとにする量」「比べられる量」は上の問題と同じ。

その「比べられる量」にあたる800円の割合は、

1-1/3=2/3

となることから、式としては

   800÷(1-1/3)

=800÷2/3

以下同じ。


このように、「割合」で普通に解けば良いだけの問題を「相当算」に入れるのは構いませんが、「相当算」「線分図」を使いなさい、などと言う教え方には意味はありません。


それでは「相当算」と言われるものを紹介します。まずは基本から。


例17(相当算/導入)


(1)ある本を、1日目には全体の1/6を読み、2日目には全体の1/4を読み、3日目には全体の1/3を読みましたが、まだ30ページ残っています。この本は何ページありますか。


(2)ある本を、1日目には全体の1/6を読み、2日目には残りの1/4を読み、3日目には残りの1/3を読みましたが、まだ30ページ残っています。この本は何ページありますか。


上の2種類の問題が「相当算」と言われるものの基本ですが、これも普通に「割合」で解けば済む問題です。なので「相当算」の導入問題として用いられています。


(1)(すべて「全体量」を「もと」にしている問題)

1~3日目すべてが「全体量」をもとにしているので、初めから通分して読んだページ数の割合を求めると

1/6+1/4+1/3=9/12=3/4

残りのページ数の割合は、1-3/4(=1/4)なので

30÷(1-3/4)=120

答え120ページ


のように解けば終わりです。

実際には、

30÷(1-1/6-1/4-1/3)

=30÷1/4

=120

で構いません。


(2)(「もとにする量」が「残り」に次々と変わるので、最後の方から順に計算をする問題)

説明は省略しますが、最初の計算式の30は、最後に残ったページ数です。

30÷(1-1/3)=45

45÷(1-1/4)=60

60÷(1-1/6)=72

答 72ページ


上の2つの問題を発展させた、次のような問題が、純粋な「相当算」と言われるものです。


例18(相当算)


(1)ある本を、1日目には全体の1/6より18ページ多く読み、2日目には全体の1/4より9ページ多く読み、3日目には全体の1/3より6ページ少なく読みましたが、まだ36ページ残っています。この本は何ページありますか。


(2)ある本を、1日目には全体の1/6より18ページ多く読み、2日目には残りの1/4より9ページ多く読み、3日目には残りの1/3より6ページ少なく読みましたが、まだ36ページ残っています。この本は何ページありますか。


(1)これも、すべてが「全体量」を「もと」にしているので初めから通分しますが、ページ数の多い少ないの読み取りが必要な問題です。

まずは

1/6+1/4+1/3=9/12=3/4

1-3/4=1/4

の計算を行い、この割合(1/4)にあたるページ数を考えます。


「6ページ少なく」読んで36ページ残るので、あと6ページ多く読むことで残りは減り、

36-6=30(ページ)

「9ページ多く」読んで30ページ残るので、9ページ少なく読むことで残りは増え、

30+9=39(ページ)

「18ページ多く」読んで39ページ残るので、18ページ少なく読むことで残りは増え、

39+18=57(ページ)

この57ページが、全体の1/4の割合にあたります。よって

57÷1/4=228

この本は228ページと分かりました。


確かめましょう。まずは読んだページ数を計算します。

1日目

228×1/6+18=56(ページ)

2日目

228×1/4+9=66(ページ)

3日目

228×1/3-6=70(ページ)

よって残りのページ数は

228-(56+66+70)=36(ページ)


合っていましたね。

これを初めから、1/4にあたる量が

36-6+9+18=57

とできるようになるまで、多い少ないの部分の練習をすれば終了です。それによって

(36-6+9+18)÷(1-1/6-1/4-1/3)

=57÷1/4=228

と、すぐに答えが求まります。


(2)「もとにする量」が変わるので、最後の方から計算するのは例17と同じです。例18(1)と同様、ページ数の多い少ないに気を付けます。説明も計算も初めはひとつひとつ行いますが、今回は簡単に示します。

(36-6)÷(1-1/3)=45

45+9)÷(1-1/4)=72

72+18)÷(1-1/6)=108


この本は108ページであることが分かりました。読んだページ数で確かめてみましょう。

1日目

108×1/6+18=36(ページ)

2日目

(108-36)×1/4+9=27(ページ)

3日目

(108-36-27)×1/3-6=9(ページ)

よって残りのページ数は

108-(36+27+9)=36(ページ)


大丈夫ですね。


確かめの仕方はいろいろありますが、このような確かめを必ず行います。確かめも「割合」の練習になります。


さて、「相当算」はこれで終わりです。これだけです。


説明に線分図を用いることはあっても、「割合」をしっかり学んでいれば線分図など使う必要もないことが分かりました。ただし、線分図を必要とする問題を解くために、線分図のかき方自体は覚えておく必要があります。

そこで、この例18を利用し、「もとにする量」を「1」とする「割合」を用いた「線分図」と、「もとにする量」を分母(整数)とする「比」を用いた「線分図」を比較したものを用意しましたのでご覧ください。





これを見ると、「相当算」では、「もとにする量」「1」とする「線分図」にはほとんど有用性はなく、説明で用いる程度に留まることが良く分かります。また、「比」を用いれば「分数のわり算」がないことで確かに計算はしやすくなりますが、かなり面倒です。結局「相当算」はわざわざ「線分図」を用いて解く必要がないことも分かり、しっかりと「割合」で解けるようにした方が実践的であることも分かるでしょう。



尚、次の問題は一見「相当算」に見えますが、「相当算」とはまったく異なる問題です。

このような問題を「相当算」に入れている場合、本当の「相当算」すら分からなくなってしまいます。


例19(??算)

ある本を、1日目には全体の1/6より18ページ多く読み、2日目には残りの1/4より9ページ多く読み、3日目には全体の1/3より6ページ少なく読みましたが、まだ36ページ残っています。この本は何ページありますか。


この問題と例18との違いを瞬時に見抜けるようになれば、実践力が付いたと言えますが、これを、文を読み取るだけで解ける子はそうそういません。「割合」を学んだだけでこのような問題を解かせること自体有り得ないことです。


このような問題こそ、「比」と「線分図」を使うことで整理することができ、解き方が見えてきます。「線分図」の必要性や、「線分図」には「比」を多用する意味、「比」と「線分図」をうまく利用することの大切さも分かるでしょう。



さて、今回「算数と数学32 分配算」の中で紹介した、例6例7の2問の解説もしたかったのですが、少し長くなってしまいました。上の例19とともに、例6、例7の解説は、次回に回したいと思います。



次回更新は、12月19日(木)を予定しています。



それではまた!


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