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suugakusha

算数と数学32 分配算

更新日:9月17日

こんにちは!


今回は、分配算の基本と、今後用いる比と割合についてのお話を少しだけ。


まず、分配算には「差分配比分配」と言う基本があります。

しかしこの2つは学年を跨いで教えることになるため、後者の比分配(を用いた混合分配算)のみを分配算と勘違いしている場合が多々あります。

ただ、これは仕方ないことかもしれません。この「差分配」「比分配」と言う単語自体、私が40年ほど前に作り、一旦はある程度広まったはずなのですが、長い年月で消えてしまったようです。もっとも重要な基本が消え、表面的なものしか残らないのは残念です。


分配算の特徴は、全体量が初めから与えられていることです。

が、全体量がわかっていても分配算と言うカテゴリーには収まらない問題も数多くあり、今回その一例(例6、7)は示しますが、解法や考え方は別の機会に示していく予定です。


また、比と割合と言う、中学受験算数で多くを占める問題に利用される単元を学ぶことにより、様々な問題に対応できるようになります。ただし、小学校4年生以下の方は、それよりも大切なことがまだまだありますので、今回後半の比分配以降は再度戻って学び直してください。

この比と割合と言う単元は小5以降に学ぶことから、一般的にはそれを用いない特殊算(つるかめ算や過不足算など)が先に扱われます。


では、まずは差分配の問題から。



分配算(差分配

例2

50枚のカードを、姉、太郎くん、弟の3人で分けることにしました。

①太郎くんは弟より3枚多く、お姉さんは弟より8枚多く分けました。

②お姉さんは太郎くんより5枚多く、弟は太郎くんより3枚少なく分けました。

③お姉さんは太郎くんより5枚多く、太郎くんは弟より3枚多く分けました。

④太郎くんはお姉さんより5枚少なく、お姉さんは弟より8枚多く分けました。

3人のカードの枚数はそれぞれ何枚でしょう。


お気付きと思いますが、上の①~④はまったく同じ問題です。

では、すべて同じような時間で把握できましたか?


①②は、前回の和差算でもお話しした「もとになっているもの」が同じなので分かりやすく、③④は「もとになっているもの」が変わっていることで、分かりづらくなっているのではないでしょうか。③はまだいいですが、④がなかなか読み取れない子もいます。


このような問題を読み取るときには、誰に合わせると分かりやすくなるか、文を変える(もとにする量を揃える)必要があります。

例えば③では、弟をもとにすると①と同じになり、太郎くんをもとにすると②と同じになります。

④ではお姉さんが2回出てきますので、例えばお姉さんをもとにすると、弟はお姉さんより8枚少なくなっていることが分かります(お姉さんではなく他に合わせても構いません)。


これらのことから式を立ててみましょう。

①は弟に合わせると、弟のカードの枚数は

(50-3-8)÷3=13

②は太郎くんに合わせると、太郎くんのカードの枚数は

(50-5+3)÷3=16

③は弟に合わせると上の①の式、太郎くんに合わせると上の②の式になることが分かります。

④はお姉さんに合わせると、お姉さんのカードの枚数は

(50+5+8)÷3=21

となることが分かります。

もとになっているものが分かったあとは、それぞれ言葉通りに求めれば終わりです。


これらは、もとにする量を揃える、ことも何も考えさせずに線分図で教えてしまえば簡単に済んでしまう問題です。なので初めから線分図をかくような教え方が主流になっていきました。

それによって、文を読み取る能力がどんどん低下していくことになります。

初めから見た目(線分図や面積図)に頼るのではなく、まずは文を読み取る能力を基本的な問題から身に付けていき、その上で線分図(や面積図等)ではどのように表されるか、またそのかき方なども学んでいくことで、後々の、線分図(や面積図等)が必要な問題にも、線分図(や面積図等)では表せない問題にも対応できるようになります。



例3(差分配

2mの棒を10cmずつ長さを変えて

①5本の棒を作ります。

②4本の棒を作ります。

それぞれ何cmの棒ができますか。


この問題も、例えば一番短い棒に合わせると

①(200-10-20-30-40)÷5=20

②(200-10-20-30)÷4=35

と、簡単に一番短い棒の長さが出ますね。あとは10ずつたしていくだけ。

もちろんこれで十分です。これは上の例2や、和差算の解2が分かっている子であれば難しい問題ではありません。分からない場合には線分図で理解を促すことになります。

もしこれを線分図で示すときは、同じ長さ(10cm)ずつ変えた線を和差算解2と同じかき方で、5本、4本かき、どの棒の長さを求めるかで式が変わることも学べます。


ここで別解として、こんなことも考えてみましょう。

5つのものには真ん中があります。

○○○○○(前から3ばん目後ろから3番目が真ん中)

4つのものには真ん中はありません。

○○○○(前から2番目と後ろから2番目の間が真ん中)

「奇数」には真ん中があり、「偶数」には真ん中がない、と言うことが分かります(これも大切な勉強です)。


そこで①は

200÷5=40

で真ん中の棒の長さが出ることに気付きます。あとは10ずつたしたりひいたりすれば良いだけです。


②はどのようになるでしょう。

200÷4=50

この50とはどんな数でしょうか。


和差算の解1を覚えてますか?

ここでは10cm違いの棒を作るので、

10÷2=5

5cmずつ、たしたりひいたりすれば10cmの違いになりますね!

つまり55cmと45cmがすぐに出ます。あとは10ずつたしたりひいたりすれば終わりです。

この考え方はすでに分配算ではなく、平均の考え方になっている訳です。

和差算の解1が理解できた子であれば、これも自然にできるようになります。


線分図で示す場合は、

5本であれば長い方から短い方に10cm、20cm移すことで、真ん中の棒が5本できることに気付きます。

4本であれば、2番目と3番目の間に線を引くことで、和差算解1と同じ解き方ができることに気付きます。



分配算(比分配

例4

カードが50枚あります。このカードを、お姉さんと太郎くんと弟で、5:3:2になるように分けたいと思います。

それぞれ何枚ずつになりますか。


比の解き方では、実際の数はそのまま、比にあたるものは○(△や□)付き文字などで表します。

この問題であれば、

⑤+③+②=⑩

⑩→50

①→5

となるので、お姉さんは⑤の25枚、太郎くんは③の15枚、弟は②の10枚と言うことになります。

割合を用いると、分母が10、分子がそれぞれ5、3、2の分数をそれぞれ50にかければ終わりです。


比分配の基本はこれだけです。これしかありません。あとはせいぜい割合(分数など)で表されているか比で表されているかの違いだけです。線分図などまったく不要です。

ただこれを線分図で表すとしたら、2通りの基本の線分図のかき方を学べます。


この比分配と差分配を組み合わせた下のような問題だけが「分配算」とされていることがありますが、そこは大きな間違いとなっています。



例5(混合分配算

50枚のカードを、お姉さんは太郎くんの3/2(2分の3、分母が2分子が3、以下同)より3枚少なく、弟は太郎くんの3/4より1枚多く分けました。

それぞれ何枚ずつに分けたのでしょう。


この問題は、太郎くんがどちらももとになっています。なので単純な分配算であると判断できます。


さて、本来ここで、

「もとにする量、比べられる量、割合」「比や比の値」と言う基本ができていることが前提となります。

なので分配算はつるかめ算や過不足算の後、更に割合や比の後に学ぶことになり、差分配と言う大切なものを教えないままの塾も多く見られます。それによって上のような単純な分配算すら難しいものと捉えてしまう子も多いのです。

「もとにする量、比べられる量、割合」「比や比の値」などの詳しい説明は別の回にしますが、和差算や分配算(差分配)を最初に学ぶときから、「もとになっているもの」はどれか、を常に考えさせることで、のちの「割合」や「比」の理解も当然早くなります。

算数も数学も、すべて繋がりの学問です。たかだか「特殊算」と言えども、最初から最後までが繋がっていることも知らずして教えることはできません。


さて、上の問題は、太郎くんがもとになっていることに気付いたらもう簡単です。

差分配で学んだことをまずは行いましょう。


お姉さんの枚数を3枚増やし、弟の枚数を1枚減らすことで、お姉さんは太郎君のちょうど3/2に、弟は太郎君のちょうど3/4になります。そのときの全体量(比分配にするために必要な枚数)は

50+3-1=52

となりますね。ここが当たり前になっているかどうかが差分配での学びです

この52枚は、すでにたしひきをした後なので、

太郎くんのちょうど3/2のお姉さん、もとになる1の割合の太郎くん、太郎くんのちょうど3/4の弟、を加えたもの(和)になっています。


これを「割合」で解くと、太郎くんがもとにする量、すなわち1の割合なので、

52÷(3/2+1+3/4)=16

の計算で太郎くんの枚数が出ます(ここは割合の勉強が必要です)。

あとは

16×3/2-3=21←お姉さんの本当の枚数

16×3/4+1=13←弟の本当の枚数

で終わりです。


これを「比」で解く場合は「連比」を用います。文で書くと長くなりますが、慣れたらあっという間に解ける方法です。

この問題では分母がもとにする量です(「比」や「割合」では分母がもとにする量ですが、分子の比べられる量を、分母=もとにする量に変えなければいけない問題もあります。例6のような問題がそれにあたります)。

つまり太郎くんはどちらの分母にもなっています。よって

3/2の分母2と、3/4の分母4の最小公倍数である4に揃えると

3/2は6/4となることから、太郎くんを④とすると、

(枚数を調整した後の)お姉さんは⑥、弟は③となります。

つまり

⑥+④+③=○の13(○付き文字です)

○の13→52枚

①→4枚

⑥→24枚

④→16枚←太郎くん

③→12枚

よって、お姉さんは24-3=21、弟は12+1=13

で終わりです。



ここで、例2~例5までを、線分図ではどのように表すのかをPDFにしてありますので、興味のある方はご覧ください。例3は自由に使えるよう敢えて何もかきこんでいません。





線分図で表すと驚くほど簡単に理解できてしまいます。線分図が有効なアイテムであることがこれでも分かりますね。

しかし、何度も繰り返すようですが、例えば前回、そして今回の、初めて学ぶ「和差算」や「分配算(差分配)」の問題において、「初めから何も考えさせずに線分図を用いる」ことだけは避けなければいけません。

なるべく簡単な問題を用いて、その問題の本質を理解させ、必要なこと(ここでは言葉を読み取り、もとになるものは何かを考え、必要ならばもとにする量を揃え、たしたりひいたりすること)が当たり前になってから用いる分には構いません。考えをまとめ、解きやすくするための有効な手段として使ってみよう、と言う気にさせれば良いだけの話です。


次に、今回解答は示しませんが、分配算とは似て非なるものを2題紹介しておきます。

また、線分図の有用性も教えながら、文を読み取る能力が低下すると、とてつもなく簡単な問題すら難しく感じてしまう、との例題も、オマケとして1題紹介しておきます。このオマケ1題は次回解説しますのでお楽しみに♪



例6

3mの棒を長さの違う2本の棒に切り、その2本の棒を深さが同じ池に入れてみたところ、一方の棒はその長さの1/4、もう一方の棒はその長さの1/7が水面から出ました。池の深さは何cmでしょう。


この問題は比と割合の問題として良く使われる問題です。

あることに気付けば「分配算」にもなります。そもそも「〜算」の分け方などでは表せない問題も数多くありますので、本質の理解さえできていれば何も問題ありません。


そして次の問題は、一見分配算に見えますが、分配算とはまったく異なるそれこそ特殊な解法が必要な問題です。そのような問題が、本来分類が間違っていることすら気付かれておらず、それぞれの特殊算に組み込まれ、その特殊算の難問として扱われています。


例7(もとにする量が変わるだけで難易度がまったく変わります)

50枚のカードを、太郎くんはお姉さんの6/7より2枚少なく、弟は太郎くんの3/4より1枚多く分けました。それぞれ何枚ずつになりますか。


例6、例7ともに別の回で解説を行いますので、それまでに解いてみてください。もちろん算数の範囲でどのように解くのかを考えてみて欲しいと思います。



オマケ

例8(差分配

姉、太郎くん、弟は合わせて50枚のカードを持っています。

今3人がそれぞれ持っているカードから、お姉さんは太郎くんに6枚渡し、太郎くんは弟に5枚渡し、弟はお姉さんに2枚渡したら、お姉さんと太郎くんは同じ枚数に、弟だけは1枚少なくなりました。

姉、太郎くん、弟がはじめに持っていたカードの枚数はそれぞれ何枚ですか。



さて、いかがでしたか?


できれば「和差算」や「分配算(差分配)」の問題を、すらすら解ける(文を読み取れる)ようになるまで練習して欲しいところです。その最初の練習が、更に深い問題にも対応できる力を培うための基本となります(大人の方は練習は不要ですw)。




さて。また忙しい夏期講座が来週から始まります。

しばらく間がありますが、次回更新は、9月19日(木)頃の予定です。


それではまた!

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