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suugakusha

算数と数学30

こんにちは!


前回「数學舎オリジナル問題」「整数」の単元から2題紹介いたしました。


後半に記述解答を掲載していますが、この「整数」と言う単元について、もう少し詳しくお話をしたいと思います。現高校2年生以下の方は読んでおいて欲しいものです。



さて、現高校3年生までの現行課程では、


現行課程 数学Ⅰ(3単位)

(1)数と式(2)図形と軽量(3)二次関数(4)データの分析


現行課程 数学A(2単位選択

(1)場合の数と確率(2)整数の性質(3)図形の性質


となっており、数学Ⅰでは全単元履修することで3単位、数学Aについては、名目2単位実質3単元の授業が行われることも多く、多数の高校が(1)~(3)すべてを学ぶようになっています。


さて、新課程ではどのようになるのでしょう。


新課程 数学Ⅰ(3単位)

(1)数と式(2)図形と軽量(3)二次関数(4)データの分析


新課程 数学A(2単位選択

(1)図形の性質(2)場合の数と確率(3)数学と人間の活動


数学Ⅰにおいては、(1)(4)の一部内容の変更はありますが、大きく変わることはありません。


問題は数学Aです。

(2)整数の性質

と言う単元(大項目)は消えてしまいました。


では

(3)数学と人間の活動

とは一体何でしょう?


現行課程でも「数学活用」(数学Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ,A,B,数学活用)と言うものが存在し、その中に

(1)数学と人間の活動(2)社会生活における数理的な考察

の2単位が入っています。


え?そんなのやった覚えないよ?と言うのも無理はありません。

現行課程では「数学」は全18単位ですが、2単位までは減じて良いことになっていて、標準16単位。つまりほとんどの高校が扱っていない幻の単元となっています。


その

「数学活用」の内容が、新課程では、数学A、B、Cに以下のようにそれぞれ振り分けられることになりました。


新課程 数学A (3)数学と人間の活動

新課程 数学B (3)数学と社会生活

新課程 数学C (3)数学的な表現の工夫


この内、B(3)とC(3)は無視して構いません。まずほぼすべての高校で履修しないことになるでしょう。

しかし、

数学A(3)数学と人間の活動

これがかなりやっかいな単元になってしまいました。


実はこの中に、現行課程では「整数の性質」に含まれていた

・整数の約数や倍数

・ユークリッド互除法

・二進法

などを「扱うものとする」と示されています。


すなわち、現行課程「整数の性質」と言う大項目は消えましたが、

 現行課程「数学活用」(1)数学と人間の活用

の内容を変更し、

新課程「数学A (3)数学と人間の活動」

の中に「整数の性質」は隠され、密かに生き残っているのです。


現在、この

数学A (3)数学と人間の活動

の中の、「整数の性質」だけは授業として行っている高校が多数あります。その理由には

「他の単元と関わることがあり必要だから」

「実際の大学入試で各大学がどのようにこの単元を扱うのかはふたを開けてみないとわからないから」

等々、各高校それぞれの判断で行われているのが実情です。


では現状(数学Aは名目2単位実質3単元)とほとんど変わらないじゃないか、と思う方も多いのですが、大学入試においてはしばらくは負担が増加するでしょう。


と言うのも、現在「数学A(3)図形の性質」は高校では学んでも、大学入試においてそれを重視している、または必答にしている大学は少なく、受験勉強の時間をさほど取られることはありませんでした(受験する大学によって変わります)。

しかし新課程から重視する大学が増える可能性があります。ただこれは可能性であり、確かなことではありません。つまり受験勉強としての時間をどのように振り分けるか、の問題が現高校2年生からの数年は「不明」のまま続くことになります。

例えば「算数と数学22~24」に掲載した「数學舎オリジナル問題第1問~第3問」のような問題が出題されるようになった場合、時間制限内で記述解答ができる実力をつけるには、とても多くの時間が必要となります。


また、整数論は現状大雑把に分けると

①ほぼ毎年出題される大学②何年かに1回出題されるような大学③ほぼ出題しない大学

に分類され、更に難易度も大学によってまったく違います。

つまり志望大学によって、受験勉強としての時間の調整が必要な単元となっています。

その「整数の性質」は、「実際の大学入試で各大学がどのようにこの単元(数学A (3)数学と人間の活動)を扱うのかはふたを開けてみないとわからない」のではありますが、予測として「整数の性質」だけは「現状維持」の可能性が高いとされています。


毎回「課程が変わった数年は生徒の負担が増加」しますが、今回の新課程では数学の変更点が多岐にわたり存在し、いつも以上に広範囲においての「学び」を深める必要があるのです。

数学Ⅰ、Aについて更に詳しく、また数学Bや、ⅢとCについてもお話したいところですが、長くなり過ぎたのでそれはまたの機会に。



それでは先週紹介した、「数學舎オリジナル問題」「整数」2題の記述解答例を楽しんでください♬

尚、解答内では 「∵(なぜならば)」の記号を用いています。


第1問

667ー435=87をみたす2桁の整数の組をすべて求めよ。

(2桁の整数とは10以上99以下の整数を示します)


第2問

①3より大きい素数はすべて、適当な整数を用いて、6±1の形で表されることを示せ。

②自然数abcは、 a^2+b^2=c^2

(えー2じょう たす びー2じょう いこーる しー2じょう)

をみたすものとする。

このとき、ab のどちらか一方が3より大きい素数ならば、もう一方は必ず12でわり切れることを示せ。



第1問


667ー435=87‐‐‐‐‐‐①


ユークリッド互除法より

667÷435=1・・・232

435÷232=1・・・203

232÷203=1・・・29

203÷ 29=7

よって、667と435の最大公約数は29


ここで、右辺87も

87÷29=3より29の倍数。よって①の両辺を29でわり、

23ー15=3‐‐‐‐‐‐②


②をみたすの組は①をみたすので、ユークリッド互除法より

23÷15=1・・・8

⇔ 8=23ー15×1‐‐‐‐‐‐③

15÷ 8=1・・・7

⇔ 7=15ー8×1‐‐‐‐‐‐④

 8÷ 7=1・・・1

⇔ 1= 8ー7×1‐‐‐‐‐‐⑤


④を⑤の7に代入し

1=8-(15ー8×1)×

 =8×2ー15×1‐‐‐‐‐‐⑥

③を⑥の8に代入し

1=(23ー15×1)×2ー15×

 =23×2ー15×

23×2ー15×3=1の両辺に3をかけ

23×6ー15×9=3‐‐‐‐‐‐⑦


②、⑦の式を用い、辺々ひくと

23 ー15 y  =3

) 23 ×6 ー15×9  =3

23(ー6)ー15(ー9)=0

⇔23(ー6)=15(ー9)


23と15は互いに素なので、整数kを用いて

ー6=15k

=15k+6

ー9=23k

=23k+9

と表せる。

は2桁の整数なので


10≦15k+6≦99

⇔4≦15k≦93

⇔1≦k≦6‐‐‐‐‐‐⑧


10≦23k+9≦99

⇔1≦23k≦90

⇔1≦k≦3‐‐‐‐‐‐⑨


⑧、⑨を同時にみたす整数kの値は

k=1,2,3

よって①をみたす2桁の整数の組は

()=(21,32) (36,55) (51,78)

(解答終わり)


第2問


①自然数の集合は、自然数kでわった余りの

0,1,2,3,・・・・,K-1ですべてを分類することができる。

よって題意より、4以上の自然数を6でわった余り、すなわち

6n、6n±1、6n±2、6n+3(nは自然数)

で、4以上のすべての自然数を表すことができる。

このとき

6nは6の倍数

6n±2=2(3n±1)は2の倍数(∵3n±1は整数)

6n+3=3(2n+1)は3の倍数(∵2n±1は整数)

となり、素数が1と自分自身でしかわれないことから、3より大きい素数のなり得る自然数の形は、6n±1だけである。

(証明終わり)


②aを3より大きい素数とすると

a^=c^ーb^(^は2乗を示します)

=(c+b)(c-b)>0

c+b>0よりc-b>0

よってc>b>0

かつc+b>c-b


aは素数より、a^の約数は、1,a,a^のみなので

a^=a^×1,a×aと表せる。

よって

c+b=a^‐‐‐‐‐‐①

かつ

c-b=1‐‐‐‐‐‐②(∵c+b>c-b)

②よりc=b+1

これを①に代入すると

2b+1=a^

⇔b=(a^ー1)/2‐‐‐‐‐‐③


ここで①より、素数はすべて6n±1に含まれることから、

a=6n±1(nは適当な自然数)として題意を示せば良い。

このとき③を用いて

b={(6n±1)^ー1}/2

=18n^±6n

  =6n(3n±1)

nが偶数のとき6nは12の倍数

nが奇数のとき3n±1が偶数となるので6(3n±1)は12の倍数。

よってすべての自然数nにおいて

b=6n(3n±1)は12の倍数となる。

これは、bを3より大きい素数としても同様である。

よって題意(a、b のどちらか一方が3より大きい素数ならば、もう一方は必ず12でわり切れる)は示された。

(証明終わり)



さぁどうでしたか?


第2問②は30年以上前に作った問題なのですが、未だに大学入試で見当たりません(見落としがあるかもしれませんが)。そろそろ素数大好きな京都大学あたりで出してくれないかなぁ。。。と思っています。



さて、次回は3月18日(月)

【算数と数学22~28】に掲載した【数學舎オリジナル問題第1問~第7問】の解答

および、特別企画【オマケ問題】の解答と簡単な解説を掲載予定です。


どうぞお楽しみに!


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