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suugakusha

算数と数学15

更新日:2023年3月18日


こんにちは!


またまた小惑星りゅうぐうの、大きなニュースが。

もう2週間も前の話題になりますが、探査機はやぶさ2が採取した砂の試料から、液体の水が検出されました!

その水は、鉄と硫黄の化合物の結晶中で守られる格好で存在し、塩や有機物を含んだ炭酸水と言うことです。また、銅と硫黄の化合物が層状に積み重なった結晶も確認されており、このような構造は、豊富な水がなければ形成されない、とのこと。一体過去、宇宙ではどのようなことが起きていたのでしょうか。

JAXAや東北大のチームは今、この炭酸水と地球の水との比較、及び分析を行っています。

同じような起源を持つものだとしても、まったく違う形成の仕方だとしても、そのどちらであろうともワクワクします。

同じ起源と思われるならば、地球の生命誕生との関わりを。

違う起源と考えられるならば、宇宙のそこかしこに「水」の存在、すなわち生命に繋がる環境がある、ことを示唆します。

木星の衛星の一つ、外殻が氷で覆われた衛星、エウロパのその分厚い氷の下にも大量の水が存在していると考えられています。またそれが塩水ではないかとも推測されています。

2024年には、エウロパ・クリッパーの打ち上げが予定され、予定通りであれば、木星を周回する軌道に入るのは2030年。エウロパ・クリッパーの本体も今年6月に完成しました。この計画が発表されてから、ずっとまちかんてぃしています!

今宇宙が熱い!!




さて、前回


「一番上と両端は1,その他は上の隣り合った2数の和」


と数を並べたとき、それぞれの段の数の並びがなぜ「二項係数」となるのか。


との疑問を投げかけました。


どうでしょう。何か思い付きましたか?



一部の「パスカルの三角形」の説明には解説されているものもありますが、少し難しく、結構スルーしている人が多いような気がします。


それでは、その謎をなるべく噛み砕いて解き明かしていきましょう。



乗法ではほとんど用いない、整式の乗法のひっ算を使ってみます。

(1段目の1と2段目の1,1は明らかなのでここでは省略)


x+1・・・<1>

×) x+1

x+1

x^2+ x

x^2+2x+1

<1>を1倍した式のxの係数は1

<1>をx倍した式のxの係数は<1>の定数項1をx倍した結果なので1

よってその和は1+1=2

x^2の係数と定数項は<1>の両端と等しく1となる


x^2+2x+1・・・<2>

×) x+1

x^2+2x+1

x^3+2x^2+ x

x^3+3x^2+3x+1

<2>を1倍した式のx^2の係数は1、

<2>をx倍した式のx^2の係数は<2>の2xをx倍した結果なので2、

よってその和は1+2=3

xの係数も同様に、2+1=3

x^3の係数と定数項は<2>の両端と等しく1となる



結果、xをかけた部分は、元々の式の次数全体を1つ上げることになります。

この、次数を上げた後(×xの部分)と次数が上がる前(×1の部分)の「係数」をたすことが、隣合った2数の和、の正体になります。

結局、そもそも「二項係数」は次数が一つ上がる度に項が一つずつ増え、その増え方自体が隣り合った2数の和を用いて作られているものだった、と言うことです。

これによって「なぜ」「二項係数」と「パスカルの三角形」のすべての段の数の並びが一致するのか、との謎は解明されました。


「係数分離法」で行うともっと見やすくなります。

    11

×)  11

 121


   121

×)  11

1331

 14641

×)   11

 14641

14641

1 5 1010 5 1


あれ?どこかで見たような・・・



「算数と数学11」灘中の入試問題、解①にありました!


結果、ひっ算で縦に繰り上げをせず計算したものは、隣通しの数をたしたものと同じ!

と「気付く」ことと同じ「気付き」が必要だった訳ですね。


さぁこの後は、どのように「証明」するかですが、

次に予定するテーマ「高校数学」「数列」の単元が必要となります。

これはどこにでも出ているかと思いますが、簡単に示しておきましょう。



「二項係数」が


「一番上と両端は1,その他は上の隣り合った2数の和」・・・★


      1     

     1 1    

    1 2 1   

   1 3 3 1  

  1 4 6 4 1 

1 5 10 10 5 1

・・・

として示せること、及び、「これらの数の並びである、上からn段目左からk段目の数はすべてn-1Ck-1となる」ことを「数学的帰納法」により示します。


2つの数が出てくるのは2段目からなのでn=2,3,4,・・・とし、

「二項定理」を用いて


f(n-1)=(x+1)^n-1=n-1C0x^n-1+n-1C1x^n-2+・・+n-1Cn-2x+n-1Cn-1


とすると

(これらの式も、「数列」の単元にΣ(シグマ)と言う記号があり、それを用いるともっとスッキリ書けます。)


(ⅰ)n=2のとき

f(1)=1C0x+1C1

各項の係数は、1,1

n=3のとき

f(2)=(x+1)^2

    =2C0x^2+2C1x+2C2

各項の係数は、1,2,1

となり、「二項係数」は、★の下線部分「両端は1,その他は上の隣り合った2数の和」、とした並びと一致する。


(ⅱ)n=mのとき、左からk番目の項の係数を

m-1Ck-1(m=2,3,・・・、1≦k≦n-1)とすると


f(m-1)=(x+1)^m-1=m-1C0x^m-1+m-1C1x^m-2+・・+m-1Ck-1x^m-k+m-1Ckx^m-k-1+・・・


下線部分だけ取り出し、この式に(x+1)をかけて計算してみます。


m-1Ck-1x^m-k+m-1Ckx^m-k-1

×)    x + 1   

m-1Ck-1x^m-k+m-1Ckx^m-k-1

m-1Ck-1x^m-k+1+m-1Ckx^m-k

・・・+(m -1Ck-1m-1Ck)x^m-k+・・

(PC用)


m-1Ck-1x^m-k+m-1Ckx^m-k-1

×)    x + 1   

m-1Ck-1x^m-k+m-1Ckx^m-k-1

m-1Ck-1x^m-k+1+m-1Ckx^m-k

・・+(m -1Ck-1+ m-1Ck)x^m-k+・・

(スマホ・携帯用拡大してご覧ください)


⇒(x+1)をかけた後の、x^m-kの項の係数は

m-1Ck-1m-1Ck


これも、x^m-k-1をx倍したことで次数が1つ上がり、x^m-kの係数となったことから、隣り合った(左からk番目とk+1番目の)2つの係数の和になっていることが分かります。


ここで

m-1Ck-1 m-1Ck

=(m-1)!/(k-1)!(m-k)!+(m-1)!/k!(m-k-1)!

=k(m-1)!/k!(m-k)!+(m-k)(m-1)!/k!(m-k)!

=(m-1)!(k+m-k)/k!(m-k)!

=m!/k!(m-k)!

mCk

(上の隣合った2つの係数の和が、1つ上の次数の、左からk+1番目の係数 であることも分かります。)


よって

(x+1)f(m-1)

m-1C0x^m+(m-1C0+m-1C1)x^m-1+・・・+(m-1Cm-2+m-1Cm-1)x+m-1Cm-1

mC0x^m+mC1x^m-1+・・・+mCm-1x+mCm


m-1C0=mC0m-1Cm-1=mCmより置き換えが可能。よって常に両端は1となる。


(x+1)f(m-1)=f(m)であることから

f(m)=mC0x^m+mC1x^m-1+・・+mCm-1x+mCm

となり、n=m+1でも成立


(ⅰ)(ⅱ)より

n=2,3,・・・のとき、各項の係数である「二項係数」

n-1C0,n-1C1,・・・,n-1Cn-2,n-1Cn-1

は、★の下線部分「両端は1,その他は上の隣り合った2数の和」、とした並びと一致することが示された。


またn=1のとき

f(0)

=(x+1)^0

0C0

=1

より、一番上の段の1と一致。


よって、n=1,2,・・,1≦k≦nのとき

左からk番目の二項係数をn-1Ck-1とすると

★で作られる上からn段目、左からk番目の数はすべて

n-1Ck-1

で表されることが示された。

(解説終わり)

尚、これは「解説」を含むので、「解答」の場合もっとスッキリとまとめることができます。


どうでしょう。

これでようやく、根拠が出揃いました。


この「二項定理」「二項係数」を用いることが許されるなら、「パスカルの三角形」の様々な規則性の証明もうまくできそうです。


ただそれには「数列」と言う、大きな単元がどうしても必要となってきます。

よって、それらはもう少し後回し。


次は「二項定理」

(1+x)^n=nC0+nC1x+nC2x^2+・・・+nCn-1x^n-1+nCnx^n・・・②


がどのようなところに用いられているのか、代表的なものを紹介します。

上の証明もこの②を降べきの順で表したものになっています。




次回更新は10月27日頃、COFFEE BREAKを挟む予定です。


それではまた!



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